依頼品の破損状況です。
ほとんどの木地の継ぎ目に切れが見られます。
まずは空研ぎを行います。
下地は薄いものだったので、新たに付けた方が良いと判断し全て落としました。
切れは深いもので、刻苧を付けるだけでは不安でした。
その為まずは破損箇所に接着剤を付け、そこに木粉を蒔き傷を埋めました。
寿司桶に刻苧を付けました。
これで破損箇所の凹凸は無くなりました。
寿司桶に蒔地を行いました。
蒔地とはまず器物に漆を塗り、その漆が乾く前に地の粉を蒔き下地にする技法です。
ヘラを使い下地漆を付けるよりも手間が掛かりますが、下地は薄く硬くなります。
今回は下地を厚く付けると蓋が嵌まってしまうので、蒔地を選択しました。
下の漆が乾いた後、中塗り漆を上から塗って地の粉を固めます。
寿司桶の内側を中塗りしました。
切れていた箇所はこれできれいになりました。
修理の途中で寿司桶の箍(たが)取れかけていることが分かりました。
一度外した後、刻苧で接着しました。
木地の乾燥によって箍がゆるんでいたようです。
寿司桶の外側を弁柄漆で中塗りしました。
弁柄漆は朱の漆より暗い色になります。
以前の色合いに近づけるためにこの漆を選択しました。
写真は中塗りが乾いた後、水研ぎしたものです。
寿司桶を上塗りしました。
内側を朱漆で塗り、外側を朱合漆で塗ります。
朱合漆は下に塗った弁柄漆が透けて見えるので落ち着いた色合いになります。